担当教科について
心が揺さぶられる研究をしよう!
生物 / 関口 伸一

Q1 担当教科に興味を持ったきっかけを教えてください。
家の周囲に雑木林があったり、従兄弟の家に遊びに行くと綺麗な川があったり、遊ぶのに適した自然環境がありました。幼稚園の時、担任の先生に「虫博士だね」と言われて喜んだのを覚えています。また、父がよく科学番組を観ていてそれを一緒に見ていました。これらのことがきっかけとなって理科や自然が好きになっていったのかなと思います。
その中でも理科という教科に興味を持つようになったのは、小学校6年生の時に理科を教えてくれた先生の影響が大きいです。理科の授業は小学校では珍しく、すべて実験室で行い、実験ベースでの授業でした。ニワトリの解剖や、洗剤や果汁など様々な溶液の液性を調べる実験、液体窒素を使って様々なものを凍らせたり、超伝導の実験も試してくれたり、数多くの刺激的な授業をしてくれました。実物に触れながらの授業が理科への興味をより深めてくれました。
また、放課後などに理科について質問をすると丁寧に答えてくれたり、地域の様々な自然の面白さについて教えてくれたりしました。私が「川の水質を調べたい」と話をした時にも「やってみなさい」と言い、調査方法についてのアドバイスをいただきました。
その後、中学生の自由研究でパックテストを使って、地元の川の各橋で、C O D(水中の有機物量)とアンモニア態窒素、硝酸態窒素、p Hを測定しました。すると、上流部で水質が悪くても下流に行くと良くなる結果となりました。自分の測定ミスかと思っていたのですが、調査結果について市役所の河川課に電話をして聞いてみると「それは、川の自然浄化作用によるものじゃないかな」と教えてもらいました。「人が汚した水を自然が勝手に浄化してくれる」という自然界の仕組みを知り鳥肌が立ったのを今でも覚えています。こうした体験もあり、理科や生物、その中でも生態系について興味を持つようになりました。
Q2 担当教科の魅力について教えて下さい。
生物という教科の魅力は、自分の考えが及ばないような不思議な現象が多様な生物によって引き起こされることです。先ほど書いた自然浄化作用もそうですが、自然には魅力的な現象が多々あります。例をあげるとキリがありませんが、渡り鳥が何千キロも離れた場所からピンポイントで一定の場所に来られるのはどうしてでしょうか。ボルネオなど熱帯多雨林には豊かな生物がいますが、どうしてこんなにも多様な生物がいるのでしょうか。そもそもある場所に生息・生育する生物種とその数は何によって決まるのでしょうか。どんな生物でも個体レベルでの生や死があるのはどうしてでしょうか。どうして、私たちの中には獲得免疫という効率的に異物を排除する仕組みがあるのでしょうか。こうした不思議な疑問には「進化」という切り口で説明できますが、詳細なメカニズムに関してはとても複雑でまだまだわからないことだらけです。複雑でわからない中にある一定の法則があり、それを理解したり、見出したりするというのが生物の魅力だと思います。
こうした生物が引き出す現象を解明するために研究するというのも大きな魅力です。学部生の時に「ヘイケボタルの生活史は生息温度によって決まる」という仮説を立て研究をする際、飼育していたヘイケボタルの幼虫の成長がとてもゆっくりになってしまいました。飼育に最適な条件にしているのにも関わらず、成長速度が低下し、「失敗したか・・・」と困惑している中、カブトムシやドウガネブイブイで研究がされていた「休眠」に関する論文を読み、それがまさにヘイケボタルでも起きていることを知り、鳥肌が立って、手が震えたことを思い出します。ヘイケボタルが休眠をするということを初めて実証したという嬉しさと、すでに先行研究があった悔しさが表出したように思います。自分なりに仮説を立ててそれを検証し、新たな事実がわかることはとても楽しいことです。こうした心が揺さぶられる研究を多くの中高生にも体験してもらいたいです。

生物 / 関口 伸一