担当教科について
数学はすっきりと整理された美しい体系
数学 / 春木 淳
Q1 担当教科に興味を持ったきっかけを教えてください。
物心ついた小さい頃から数や物事の仕組みに興味があったんだと思います。先で習うようないろいろなことを親に説明してもらっていました。父親が数学・物理好きで、小さい頃から数学の問題を出されたり、物理の本を与えられたりしていました。また、そういったところで得た知識を周りの人によく教えていました。教えるのも好きなので、「教えるために自分がまた勉強して説明を考える」という「教員的なよい循環」が当時からすでにあったように思います。
一方で、高校のときの倫理の先生の影響で、背伸びをして哲学の本を読む時期がありました。デカルトの「方法序説」やマキャベリの「君主論」、プラトンなどのギリシア哲学の本などなど。複雑な論理的思考はそれほど得意ではありませんでしたが、考えを整理できるのは好きで、色々な物事をつきつめて考える哲学的な思考も結構好きでした。数学は大学において抽象度がさらに上がる一方で、実数や連続、収束などの定義も厳密化されます。大学に入ってからも純粋数学を続けていきたいと思ったのは、そのような性格のせいであったのかもしれません。
Q2 担当教科の魅力を教えてください。
数学とはすべての科学の基礎となる数と論理の体系です。古代より1,2,3,…,と数えていたころから文明とともに発展してきているのですが、人間が創り出したものというよりは、数学は「もとからそこにあり、我々が気づいていないだけ」ではないかと思ったりします。
数学は分からない人にとっては苦痛以外の何物でもありません。しかし、一旦理解をして見渡せるようになると、非常にすっきりと整理された美しい体系であることが分かります。その美しい体系に触れると、その先にあるまだ見ぬ新しい世界にも惹かれていきます。
数学の中の重要な性質で「対称性」というものがあります。図形で線対称や点対称といったものは有名ですが、図形だけでなく数式や数式の変形の仕方にも対称性があったりします。私の専門としていた保型形式は、非常に高い対称性の性質をもつ関数です。この対称性の性質より、整数の性質が導かれます。
整数論という分野は天才数学者ガウスが「数学の女王」と呼んでいました。問題設定はシンプルであり、多くの数学者を魅了してきた分野なのですが、解決に全く異なる分野の理論を必要とすることもしばしばあります。有名なフェルマーの最終定理
n ≧ 3 のとき xn + yn = zn をみたす自然数x, y, zは存在しない。
を解決するためにも、一見関係なさそうな保型形式が必要でした。
見た目はとてもシンプルで簡単そうに見えるものでも、実はとても奥が深くて、意外なところで全く別の理論とつながっていたりするのは、整数論が本質的であるが故であるといえるでしょう。そしてそこが多くの人を惹きつけるところでもあります。
数学 / 春木 淳