担当教科について
フィクションのミステリーよりもはるかにおもしろく思えます
理科(生物) / 石塚 泰啓先生
-Q1 担当教科に興味を持ったきっかけを教えて下さい。
高校生時代、多くの生徒がそうであるように進路選択に迷いました。親の影響で建築に興味を持った時期もあるのですが、親の真似は良くない!という、親への反抗なのか何なのか、意味不明な理由で興味を断ちました。
かといって何かに本気になるわけでもなく、何に興味があるわけでもない自堕落な日々。ふいに、小学生時代のことを思い出しました。昆虫採集とパソコン。昆虫そのものに対する興味は以前より薄れていましたが、昆虫を通して、その多様性が生み出されたしくみとか、昆虫の変態にみられるような生命現象のしくみには漠然と関心がありました。パソコン(情報系)よりもとっつきやすそうだし、だんだん、理学の一領域である生物学が学問の王道のように思えはじめ、その先の将来のことは深く考えず、生物学で行こう!と決めてしまいました。
-Q2 担当教科の魅力を教えて下さい
生物学の魅力は2つあります。
1つ目は、生物学は再現性のある基礎科学であり、技術を生み出す最も根本的な学問分野の1つである、ということです。生物学がどのように応用できるかは、当の生物学者達にもわかりません。例えば、DNAの解明と詳細な理解が、より筋肉量の多い食肉の生産や抗体医薬の開発、iPS細胞の作製につながり、さらには犯罪捜査や考古学にすら影響を及ぼしています。こんなことを、ワトソンとクリックは予見していたでしょうか。このように、生物学は私たちの生活や社会を向上させる力をもっています。その力を知ること、そしてその力を研究によって拡げられることを知ることには大きな意義、魅力があると思います。その力が、一方では環境問題を引き起こし、生物兵器すらつくってしまう可能性があることを忘れてはなりませんが。
もう1つの魅力。それは、生物学が解明した真実そのものの美しさや、解明過程のワクワク感です。例えば、昆虫のからだづくりに関わる遺伝子(Hox遺伝子群)。これらは染色体上で、影響を及ぼす部分(口→首→胸部→腹部といった具合)の配置と同じ順序で並んでいるばかりか、同様の遺伝子群が我々脊椎動物においても、頭から尾の遺伝子まで、染色体上に順番に並んでいるというのです(1995ノーベル生理学・医学賞)。進化の過程で昆虫と脊椎動物の共通祖先が得たこの並びの美しさ、そしてそれらを詳細な実験、観察によって発見してしまった生物学者達の興奮を思うと、フィクションのミステリーよりもはるかにおもしろく思えます。
ほんの少しだけ生物学研究をかじったことのある端くれとして、これらの魅力を一人でも多くの海城生と共有できたらと思っています。
理科(生物) / 石塚 泰啓先生