• 第二回数学科リレー講座「ガロア生誕200年記念講習会」第六日目

第二回数学科リレー講座「ガロア生誕200年記念講習会」第六日目

2011.08.28

  • 数学科

最終日の今日(27日)は網谷先生が担当(写真1)。ガロア理論のアプローチの方法はいくつか考えられますが、昨日の授業を聞き、その「バトン」を受けて、アンカーはスタートされました。
スタート直後、ガロア理論で何が得られるのかについてあらためて説明されました。群、体、自己同型写像etcと新しく聞く用語が飛び交っていたこの2日だけに、まずは、それらを勉強することの意義がわかるこの説明にホッとしたことでしょう。
とりわけ、今日までに十分には説明がなされていない正規部分群の概念については、根が有理数とべき根で表されない代数方程式の存在を明確にするために導入したものとの説明は明快至極でした。
第一コーナーを回るあたりで、方程式のガロア群の定義が登場。最終日の大団円へいざなわれる生徒たち。昨日話のできなかった(本講座のひとつの山である)3次方程式のガロア群が、根の差積を用いて具体的に求められ,この群が一般には、三日目に出てきた3次対称群になることが説明されました。ときにはガロア群が3次巡回群になる場合があることにも言及され、「おはなし」だけに終始させまいという網谷先生の熱意を垣間見ます。折に触れて、演習問題も用意されているので、生徒は実感しながら聞いています(写真2)。
中間地点にさしかかり、いよいよガロア理論の本題である,体の拡大とガロア群の縮小の関係が登場しました。「解けていない」方程式を「解けた」方程式にするために,係数体にべき乗根を添加して拡大体の列をつくること。そのとき,各拡大体上のガロア群が縮小して部分群の列が対応すること。そして,方程式の可解性がガロア群の可解条件で表せることが,見事に示されました。
最終コーナーからは、3次方程式の根の公式を振り返り,ガロア群を使って体の拡大列とガロア群の正規部分群の列を示し,根が平方根と立方根をとることで求められる仕組みを生徒と共に確かめてゴールのテープを切った網谷先生(写真3)。見事なアンカーぶりでした。
最終日らしく、大学の講義のような高度な内容でしめてくくられた本講習。前日までに準備してきた項目が周到に用いられていましたので、夏休みの残りで、じっくり読み返すと必ずや理解できるものと思います。残念ながら、5次方程式の不可解性までは時間が足りず言及されませんでしたが、本講座で代数学の妙味を感じた生徒たちにしてみれば、「理解せずに終われない!」はず。そう、この先は“自ら”学ぶのです。復習していて分からないことがあれば、遠慮なく担当者に質問してください。共に、学ぼうではありませんか。
最後に、ガロアの意味では5次方程式は解けませんが、“テータ関数”を用いれば、解を表示することもできるのです。そして、それはガロアの意味とはどう違うのでありましょうか?こんな風に、まだまだ数学の楽しみは続きます。
ともあれ、偉大なガロア先生生誕200年に際し、このような試みができたことに担当者一同、感謝で一杯です。熱心に聴講してくれた受講生の皆さん、有難うございました。皆さんの今夏の思い出のひとつにしてもらえれば、こんな嬉しいことはありません。
数学科のリレー講座。また、来年の夏にお会いしたく思います。ごきげんよう、さようなら。
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  (写真1)


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  (写真2)
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  (写真3)
【受講者の声】(坂本龍彌君)
配られた資料はとても難しそうで少しも理解ができないで終わってしまうんではないかと思ったけど先生が解説をしながら図をかいたり、一つ一つ細かい例も出してくださりガロアのことが少しぐらいはわかったんじゃないかと思った。まだまだ3次方程式とか習っていないけれど、今後習っていく上で今回の講習の内容を利用できたらいいなと思った。
【受講者の声】(伊得友翔君)
講習が始まったときは難しいと感じたが、簡単そうなところから教えてくれたのでなんとか理解することができた。自分の将来にいつか役に立つと思うので、今度またこのような講習があったら積極的に参加したい。
【受講者の声】(福尾幸祐君)
かなり難しかった。式がいろいろと出てきて、だんだん分からなくなってくる。ガロアは若い年に死んでしまった人だけど、こんなにややこしいものを証明したり、理論を作るのはすごいと思った。
【受講者の声】(山口哲君) 
今日の講義は難しかったです。しかし、とても面白かったです。
例えば、群の大きさを比較して群を確定する考え方などです。
そしてなにより、方程式が解けるかどうか(可解性)を群の言葉で表現するところに感動しました。もともと有理数の四則計算とベキ根で解が表せる時に可解性がありますが、体の拡大列は有理数体にベキ根を有限回(n次方程式ならn回)加え続けて出来るものだと解釈できました。
もともと言い換えにすぎないので当たり前なのに、普通は思いつかないし、そこにガロア理論のエッセンスが凝縮されている事を感じました。
6日間の講義を受けて、大学で受けるような授業を体験できたのでよかったです。
この講習の約半分が群論についてでしたが、この短時間でここまで分かりやすく説明してくださって有難かったです。群論と方程式を想像もしないところでうまく組み合わせているガロア理論は、素晴らしいと思いました。6日間ありがとうございました。
【講義を終えて】(網谷先生)
最終日は、ガロアの定理の説明がテーマです。
この定理は、有理数体の拡大体と方程式のガロア群の部分群が対応するということをいうものですが、非常に難解な定理として知られています。
中高生に伝えるとなったとき、全く分からなかったとなると残念なことになるので、「数」の視点から、ガロア理論の意義のなるべく分かりやすい説明を最初に行いました。
結構真剣に聞いてくれている様子でうれしかったです。
そのあとの話の流れは、「方程式のガロア群」→「ガロアの定理」→「3次方程式」
となりました。「5次方程式」は、時間の関係で説明できませんでした。
3次方程式がなぜ平方根と3乗根を1回ずつ使って解けるのかということを伝えたかったのですが、途中でタイムアップ。
ガロア群を見れば、方程式が解けるかどうか、また解ける場合どういう風にべき根を取ればよいかが分かる。
このことが、定理の醍醐味で、ガロアの天才ぶりを表すものです。
プリントなどの準備には、いろいろ悩んだところもあったのですが、数学の奥深さや美しさ、何でもよいので興味をもって皆さんが勉強を進めてくれたら、これ以上の喜びはありません。
  (編集子 M)