地学 箱根巡検
2024.11.15
理科・地学では、11月1日の創立記念日を利用して、希望者対象の巡検を実施しました。日本史の教員とも連携して、箱根火山の活動や地形について、地学的な視点のみならず、歴史的な視点からも考えたり、感じたりすることをテーマとし、中1〜中3の31名が参加してくれました。見学した場所を参加生徒の感想と合わせて紹介します。
神奈川県温泉地学研究所の方々をはじめ、この巡検の実施に関わってくださった皆様にこの場を借りてお礼申し上げます。
STOP 1 大観山展望台 【箱根火山の全体像を捉える】
カルデラ外周の外輪山にある大観山展望台から、初めに箱根火山全体の地形をとらえるとともに、その噴火史について確認しました。〜参加生徒感想〜
・今まで、地学の授業や受験でカルデラについて学んでいましたが、実際に行ってみると、思っていた以上にはっきりと外輪山と中央火口丘がはっきりと見られて感動しました。また過去に新幹線などで国府津・松田断層付近を通ったことがありましたが、プレートをまたいでいることすら全く気づいていませんでした。今回実際に見て、地形の違いも観察でき、とても興味を持ちました。今後出かけるときは、移動中も周りの地形などをよく観察しようと思いました。
・大観山展望台から見える景色を、しおりの9ページ、10ページの図を通して見ることによって、ただの自然としてではなく、その山の形になったきっかけ、岩石の種類など、箱根山の把握によって山の歴史として観察できました。これが一番新鮮だったと思います。
STOP 2 箱根関所 【箱根の地形と日本の歴史の関係を学ぶ】
関東地方と東海地方を地形的に隔てている箱根火山と人の歴史との関わりを考えました。箱根関は、その地理的条件からも江戸城を中心とする関東平野の防衛線としての重要な役割を担っており、特に「入り鉄砲に出女」の取り締まりが厳しくなされていたことなどを、展示や解説から学びました。〜参加生徒感想〜
・自分の中で特に印象に残った場所は、箱根の関所だ。関所というものが何のためにあるのかということは元から知っていたが、箱根が抜けられるルートが少なく突破が難しい地形だからこそ、関所が作られ関東を防衛していたという地学的な視点も持つことができた。多角的な視点を持つと、世界の見え方が広がっていくという面白さを味わうことができた。
・箱根の関所では、「おたま」の話や、関所破りをした人の残酷な処刑の仕方から、当時は、一人の人の命より、幕府の安全の方が優先度が高かったのかなぁと思った。関所内には、とても急な坂があり、箱根の地形を体感できた。道幅も狭い箱根の関所を破ることはほぼ不可能だということを、実際に見てみて感じた。
STOP 3 大涌谷・箱根ジオミュージアム 【現在の箱根火山の活動を感じる】
大涌谷は、箱根火山中央火口丘の最高峰である神山(1437 m)の北側に位置し、噴気活動が見られる場所です。神山は約3100年前に、地下からの溶岩の上昇によって山体崩壊を起こし、この崩壊地の中に大涌谷ができました。
〜参加生徒感想〜
・大桶谷に行った際、硫黄のある温泉の蒸気も確認できた。実際に見られた白い煙と地図からの知識を重ね合わせてイメージした。元々早川だった川に神山からの山体崩壊が堆積して堰き止められ、今の芦ノ湖が形成されたと身をもって実感することができた。また、大桶谷から山の斜面が扇状地の方向に傾いていることからも神山の山体崩壊が起こったことも分かる。
・大涌谷はその施設だけでも満足度がとても高い所だった。火山活動を匂いで感じられるほか、火山の恩恵を味で感じられる黒卵も食べることができた上、人がどのように温泉が利用できるようにしてきたか、地震とどのように関わって来たか見ることもできた。特に火山の熱噴気と水を混ぜて、熱噴気が上がっているなら温泉が作れるように整備されたということは初めて知った。それが箱根独自であることも意外だった。
STOP 4 長尾峠の露頭 【地層の観察を元に、箱根火山の外輪山を形成した火山活動について考える】
「露頭」とは、崖や海岸などをはじめとする地層が露出している場所のことです。長尾峠の露頭では、箱根火山の外輪山の断面の、溶岩と火山砕屑物の地層が交互に重なる様子を観察しました。また、溶岩の地層の傾斜方向から、当時の溶岩がどちらへ向かって流れたのかがわかります。このことから、当時の箱根火山は富士山のような単独の巨大火山ではなく、いくつもの成層火山が連なっていたことと考えられています。
〜参加生徒感想〜
・長尾峠の露頭では地形全体では僅かな面積であるが、それの中にある玄武岩やスコリア・火山噴出物が流れた方向といったことから全体の地形や火山の様子まで把握できることや山の形から内部の溶岩の違いまでわかるということにより、もっと地学に興味を持った。私の家には露頭の観察ガイドや特徴的な日本の地形について解説している本もあるので、それらを読み、今回のことも参考にしながら、しっかり計画を練って自分でも行きたいと思った。また、今回の巡検で冠ヶ岳の溶岩ドームを見たことで冠ヶ岳はデイサイト質溶岩を噴出した火山だと分かったが、長尾峠の露頭で見たのは玄武岩やスコリアといった苦鉄質溶岩ばかりであったので、その違いや何が理由によって変わったのかということについてをもっと調べてみたいと感じた。
・僕は、お昼休憩をした露頭のところが一番好きでした。僕はもともと地形や岩石などが問題で出されて、解けはしないけれど、好きだったので、ジオパークなどのホームページの写真などを見ることはよくありました。しかし僕はどちらかというと外で自然と遊ぶより、部屋で本を呼んだりしていたりしていた方が好きなので、アウトドアで遊ぶことはあまりなかったので、直接見ることはゼロと言っていいほどありませんでした。しかし、今回初めて見たその露頭は地層や岩石の色合いや形状が独特で、歴史を感じました。初めての経験として、とてもいいものになりました。中学1年の1学期の授業で学んだことが生かされて、どこから始まって、どういうふうに重なって、どこが一番新しいかなどがはっきりとわかりました。
STOP 5 温泉地学研究所 【火山活動やプレート運動等について、講演・展示物から学ぶ】
活火山である箱根火山の活動は、箱根火山のカルデラの中に暮らす約15000人をはじめ、多くの人に多大な影響をもたらします。箱根火山は、気象庁による常時観測が必要な50の火山のひとつであり、その観測の一翼を担っているのが温泉地学研究所です。研究員の方にご講和いただきました。
〜参加生徒感想〜
・僕が一番印象に残っているのは温泉地学研究所で各地の地震計をリアルタイム(1分遅れとのことでしたが)で計測し、その計測結果の中で人間の行動によるノイズや、遠い地点で起こった地震の振動が入っていたことです。遠いところでの地震であっても実は自分の足元にも少し影響を与えているのだということが分かり面白かったです。また、温泉地学研究所の講演してくださった研究員の方が生き生きとしていることも良かったです。
・実際に現場で働いている人の貴重な話が聞けてよかったです。ノイズが地震波のようにも見えてしまったり、トルコの地震でうねうねした波を観測していたり、断定も難しそうだなと感じました。また、スコリアの説明で、鉄とマグネシウムが混ざっていると書いてあり、スコリア軽石の派生の割に重くないか?と感じていた思考の詰まりが一気に取れて気持ちよかったです。
STOP 6 石垣山一夜城展望台 【国府津-松田断層の観察】
1590年、小田原を含む関東一帯を支配する後北条氏の征伐を決意した豊臣秀吉は、徳川家康らを動員して小田原攻めに乗り出し、その後、天下統一を完成させました。この小田原攻めの重要拠点として石垣山に急遽構築した城が「石垣山城」です。石垣山城跡は、箱根山の外輪山の一番東縁に位置しているので、ここからは箱根山の東方の地形を一望することができます。 〜参加生徒感想〜
・一夜城では雨が降っていたけれど、夜景がとても綺麗で感動しました。とても高くて小田原城を見下ろせるし軍の分布を見ると海上にも軍がいるので後北条氏が降参した理由もよく分かりました。そして、この巡検で地理、地学、歴史の別の教科は繋がっているんだということを改めて理解しました。
・最後の一夜城ですが、小田原城が丸見えだったので、北条からすれば、あそこの突然城ができたら、ショックを相当受けるだろうなと思いながら、城下を見ていました。いろいろな、実際に行かなければ、よくわからないようなことを見れて、楽しかったです。