2024年度数学科リレー講座「アーベルの定理200年記念講座」6日目
2024.09.02
第15回夏期講数学科リレー講座のラストは、まさに近代数学の曙光と位置付けて過言ではない「楕円関数」について、その入門講座としました。
これは、本講座のテーマが、1824年の「一般に、複素数係数の5次方程式の根(解)は、係数の加減乗除とべき根だけでは、表せない」という、いわゆる(今日でいう)アーベル・ルフィニの定理の理解であり、
それが前日に成就したことから、最終日のテーマを、その定理から約30年が経過した1858年に
フランスの数学者エルミートにより発見された「5次方程式の根(解)は、楕円関数を用いて表示できる」
内容は、名著でなる髙木貞治先生の「近世数学史談」の中の二つの章をとりあげ、この書における楕円関数の種々の計算について丁寧に書かれた河田敬義先生の「ガウスの楕円関数論」(上智大学数学講究録)の流れに沿いました。
これは、ハイレベルな数学ではありますが、巨匠による「足場の分かる」叙述であり、随所に、生徒と一緒に行う計算を心掛けたので、多くの受講者がついてきてくれたようです。
楕円関数論の建設が済んだ今日にあっては、楕円関数といえば、
なるほど、スマートかつモダーンでありましょう。
洗練されたトピックを初学者に教授する際、その原典にあたる重要性を、改めて痛感した次第です。
さすがに、具体的な5次方程式について、その根を楕円関数で表示するまでには至らず、精々が、サインレムニスケートが二重周期をもつことを示すまでにとどまり(極と零点については配布プリントを読んでもらうこととしました)ました。
とはいうものの、今日の熱心な聴講ぶり、並びに講座終了後の熱心な討議ぶりから、今後、「楕円関数」と聞いたとき、それが楕円を表すのではなく、
といったことを答えてくれることを期待できると思います。
ともあれ、18世紀、19世紀における数学の碩学たちの創造とその変遷に触れることは誠に楽しく、
数学万歳。
(6日目担当者)
生徒からの感想
単位円を用いて、サインの逆関数から、サインの加法定理を導いた類似として、レムニスケートを用いて、楕円関数のひとつであるガウスの楕円関数を発見したところが面白かった。
レムニスケートの全長が近似値でしか求められない、ということだったが、なぜそうなのか?に興味が沸いた。
ラストで、ガウスの楕円関数がトーラス上の関数とみることができるというのがとても面白かった。(中2)
サインの逆三角関数から、サインの加法定理が導かれるのがとても美しいと思いました。
それにしても、ガウスはなぜ、単位円の場合でのアナロジーとしてレムニスケートを使うことにしたのでしょうか。そこにとても興味があります。 (高1)
今日の最後の方はとても高度でしたが、先生の丁寧な誘導があったのでしっかり理解できました。
楕円関数にはもともと興味があったので、これを機に学んでみようと思いました。(高1)
5次方程式の解が、三角関数の類似の関数である楕円関数で表示できることに驚いた。
また、様々な対称性、類似性が見られて、先人たちのアイデアに感嘆した。
5次以上の方程式において、解の表示がどんな関数で、どう一般化されるのかに興味をもった。(中3)
中1のときからリレー講座をうけています。1、2年のときは内容が難しく聞き流す程度にしかできませんでした。
しかし、今年は授業で習った2次方程式から始まり、夏休み中に独学で進めていた単位円を利用した三角関数がでてきて、内容も分かりやすく、とても面白く聞くことかできました。
そして、5次方程式の解を、聞いたこともない楕円関数という関数を使って解くということと、その際に逆関数、積分、レムニスケートなどが登場し、これらについて、早く理解できるようになりたいと強く感じました。
今日のラストの方はかなり難しい内容でしたので理解できないこともありました。でも、それが悔しかったので、早くそれが分かるように勉強してみたいです。(中3)
なお、この3日間は、数学部同士で交流のある昭和女子大中高の数学研究会の生徒さんも参観され、以下の感想を寄せてくださいました。
3日間貴重な経験をありがとうございました。今回初めて数学のリレー講座授業に参加をし、普段学校ではあまり学ばない数学の知識を学ぶことが出来て有意義な時間を過ごすことができました。
最初の方は話についていくのが精一杯でしたが、2日目からは教えていただいたことに対してなんでそうなるのか疑問を持ったり、定義を理解したりしながら受講することが出来ました。
具体的な数を一般化で記号にしたり、まだ授業で習ってない範囲もあって難しかった部分もありましたが、新しい定義や基礎的なことを知ることができとても楽しく、今後も数学を深く学んでいきたいと思いました。
また機会があれば参加してみたいです! (高1)
普段の授業で習う問題とは異なり、非常にハイレベルな内容に挑戦できとても刺激的でした。
確かに難しい部分が多かったのですが、それ以上に数学の奥深さと面白さを改めて感じることができました。
特に普段あまり学ぶ機会のない数学の歴史に触れられ興味深かったです。
オイラーを悩ませていた問題を、貴族であったファニャノの示唆で解決したことが楕円関数の発展につながったことをはじめ、初めて知るエピソードばかりでとても面白かったです。
また、今までは先生に教えられた解の公式をただ使って解いていたのですが、自分でその公式を導き出す機会があり、数学の楽しさを一層感じました。
この三日間の授業を通じて数学の世界がさらに広がったように感じます。
ぜひ数学研究会の他のメンバーにもこの経験を共有し、数学を一緒に楽しみたいと思います。 (高1)