数学科リレー講習前半

2022.08.23

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夏の数学科リレー講習は、今年で第13回目の開催となりました。今年のテーマは『πとeとiの話』と題して、最終的には有名なオイラーの等式(e^{πi}+1=0)を証明することを目標としています。前半3日(19,20,22日)は講堂で215名の受講者に対して概要を説明し、後半3日間(23,24,25日)は受講希望者の中から抽選で選ばれた60名に対してより数学の内容に踏み込んで講義をしていきます。まずは前半の様子をレポートいたします。

1日目

初日は円周率πについてのお話です。
①このリレー講座に登場するπ、e、iは「数」ですので、まず「数」についてのお話をしました。ものを数える自然数から四則演算で閉じるように拡張した数を有理数といいますが、π、e、iはどれも有理数ではありません。特にπとeは無理数であり、数そのもの自体が「無限」と密接に関連しています。無理数であるπやeを小数で表そうとすると必ず無限小数になります。
②次に、πから少し寄り道になりますが、「無限」はときに私たちの感覚と矛盾するような振る舞いをします。いわゆるパラドクスです。無限を扱うときの「難しさ」でもあり、一方で無限の「面白さ」でもあるわけです。せっかくの機会ですので「無限」についてのトピックをいくつかお話しました。
③そして、今日のメインであるπについて。実用的には3.14で十分なのですが、古くからより正確な値を求め多くの人々が努力してきました。その方法はざっくりいえば、微積分発見前は円に内接・外接する多角形を用いる方法、微積分発見後は無限級数による方法となります。それらの方法について簡単に説明したあと、パソコンの限界はありますが、その両方の方法で実際に円周率の値を求めてみました。PDFの資料と一緒にスクリプトもアップするので興味がありましたら試してみてください。
※難しい内容もありましたが、生徒諸君には興味をもって聞いてもらえたようです。講座中に出てきたキーワードがいくつかありますので、今後それをとっかかりにして理解を深めてもらえたら嬉しいです。(小澤・吉村)

1日目のスライド  maxima

  

2日目

2日目は、『iのはなし』と題し、虚数について掘り下げました。
中1、2生が多く受講しているため、前半は多くの2次方程式を解き、得られた根により、数の体系を説明しました。
後半は、16世紀にイタリアの数学者ボンベリが用いた、3次方程式を解くことで虚数を「認めさせる」手法について説明した上で、虚数を「実感」するために、19世紀にドイツの数学者ガウスが導入した、いわゆるガウス平面のアイデアを説明しました。
その道すがら、虚数に対しての湯川秀樹博士やフィンマン博士の見解を紹介しました。
とりわけ、3次方程式の話題は易しくありませんが、その分ということでしょうか、興味深くメモを取っていた生徒のたちの姿が印象的でした。(川崎・城島)

  

3日目

講座前半では, プレゼント交換の問題を例として, 完全順列の総数(モンモール数)を具体的に求めてから漸化式を導出し、「n人でプレゼント交換を行った場合, 誰も自分の用意したプレゼントをもらわない確率」まで求めました。
講座後半では、微分のイメージと多項式の微分の計算法を説明したのち、「微分したら元に戻る関数」の底としてネイピア数eを導入し、べき級数展開を通して完全順列の確率の極限がeの逆数と一致することを中学一年生が理解できるレベルで示しました。
本日で読み切り形式の講義が終わり、明日からはオイラーの公式に向けて体系的に準備を進めていきます。(蔡・上野)

  

生徒の感想

微分の話など高校数学につながる範囲もあったが、さまざまな数学の面白い分野が学べたし、関係が見えて面白かった。(中1)

難しそうだったπやiやeのことをわかりやすく説明してもらい、有意義だった。(中1)

初日は無限や数πについて、2日目は三次方程式、iについてで、3日目はeについてだった。π以外はどれも聞いたことがなく、理解するのに苦戦したが、分かったときはすごく面白かった。(中1)

なんとなくしか分からなかったe,i,πが、よく分かるようになった。これを使ってみたくなった。(中2)

リレー講習の、πとiとeの話は難しかった。でも同時に、興味がわいてきた。数学に対して興味が持てるような講習が増えたらいいなと思った。(中2)

自分がこの3日間で最も印象に残っているのは3日目のeについての講義だ。ちょうど先日数学Bの場合の数の講習でやっていたプレゼント交換の問題とeがつながったときはカタルシスがすごかった。一見なんら関係がなさそうなものどうしがつながるのはとても興味深いことだと思う。自分もそうした発見をしてみたいと思った。(中3)

1人1人の先生方がわかりやすく面白い数学の話をしてくださり、受けてよかったなと思いました。最初は関係がないと思っていた2つのものが最後にはつながっているのを見て、やはり数学は面白いと実感しました。(中3)