理科・地学 立山・糸魚川巡検合宿

2018.08.07

  • 地学部
  • 理科

理科・地学では8月2日から4日の2泊3日で巡検合宿を行い、糸魚川世界ジオパークと立山黒部ジオパークという2つのジオパークを訪れました。生徒の感想を交えながら、写真とともにその様子をご紹介します(太字が生徒感想です)。

今回は往復とも移動に新幹線を使いました。新幹線の車窓から見える景色もよい学習になります。

18.08.02立山1  
赤城山。

18.08.02立山2
こちらは浅間山。

糸魚川駅について、まずはヒスイ海岸での礫の採集を行います。ヒスイは日本人の歴史にも密接にかかわっており、日本鉱物科学会によって日本の国石に認定されています。およそ7000年前の縄文時代にはハンマーとして使われていたようです。これは世界最古のヒスイ文化だといわれています。その後は勾玉などの装飾品として奈良時代まで使われていましたが、仏教が広まって以後、使われなくなったとのことです。1200年の間忘れられていたヒスイが、改めて日本で取れることが分かった場所が、この糸魚川でした。糸魚川のヒスイは5億2000万年前にできたもので、世界で最も古いヒスイだといわれています。

18.08.02立山3
糸魚川駅近くのヒスイ海岸。

18.08.02立山4 18.08.02立山5
ヒスイ採集の様子。

気温が高かったころもあり、バスで少し涼みながら海岸を移動し、富山県の宮崎海岸でヒスイ探しの続きです。

翡翠海岸の色とりどりの石がとても印象的でした。翡翠探しと同時に玉髄や姫川薬石などの石も知ることができ、とてもよかったです。また、翡翠の選別をする際に流紋岩がどのように見分ければ良いのかも、何となくですが分かるようになりました。他の石もこれから判別できるようになりたいと思いました。

18.08.02立山7
こちらが姫川薬石と言われる石です。

18.08.02立山8
次に黒部川扇状地へ向かいました。黒部川扇状地は非常にきれいな扇形をしています。扇状地と言えば果樹園などの利用が一般的ですが、黒部川扇状地は豊富な湧水を背景に、水田地帯となっています。

18.08.02立山9
愛本橋という橋がちょうど扇頂部にあたります。こちらは愛本橋から撮った愛本堰堤です。

黒部川扇状地を車窓観察しながら向かったのが、宇奈月市民サービスセンターです。建物の前に十字石のよい標本が置かれています。日本列島が大陸の一部であった約3億年前に堆積した堆積岩が、約2.5億年前に変成作用を受けてできた変成岩の中に見られます。
18.08.02立山10
18.08.02立山11
長柱石の結晶同士が60°または90°で交差します。

国産の十字石を観察するのはおそらく初めてで、貴重な経験となりました。

18.08.02立山12
常願寺川は長さ56㎞という短さにもかかわらず、水源から河口までの標高差は3000mもあります。とても深いV字谷ができています。

次に、立山砂防博物館の見学です。

18.08.02立山13
3Dの大型映像で立山カルデラの成り立ちや土砂災害について学びました。

立山カルデラ砂防博物館では、立山カルデラの歴史や土石流と人との闘いについて学ぶことができた。中でも常願寺川の治水については、立山カルデラからの土砂による土石流から守るために富山藩が植えた防水林や、オランダ人技師による堤防の建設などに興味を持った。

18.08.02立山14
このような大きさの岩が土石流で流れてきます。

1日目の最後は天体観察です。宿泊した国立立山青少年自然の家には60㎝の反射望遠鏡があり、富山大学の方に操作していただき木星や土星を見ることができました。雲が多く、見られる天体が少なかったのですが、それでも木星はガリレオ衛星も見ることができ、土星はリングもはっきり見ることができました。
18.08.02立山15

カメラの性能などで残念ながら綺麗な写真を撮ることはできませんでしたが、都会から離れた場所での60㎝反射望遠鏡による木星、土星の観測、普通の望遠鏡による火星や2重星のアルビレオの観測、講師のかたによる解説など、とても有意義なものでした。その内でも特に、2重星とは何なのかがよく分からなかったので調べてみたいと思います。

1日目の夜の天体観測では、一時雲が広がって心配でしたが、富山大学の方が60cm反射型望遠鏡の説明をしてくださっているあいだに巻き返して、満天の星空を見ることが出来ました。望遠鏡を通して見て驚いたのが、土星の輪の大きさです。僕が見た時はまだ薄雲がかかっていて少しぼやけていたというのもあるとは思いますが、それでも土星の輪がとても大きいことに驚かされました。

2日目は立山駅から黒部ダムまでの間を、立山黒部アルペンルートで往復しました。往路と復路で分けずに、立山駅に近いほうから順に紹介します。

18.08.02立山16
出発前にまずは朝食。

18.08.02立山17
立山駅の次の駅である美女平まではケーブルカーを使います。

次の室堂までは高原バスで50分かかります。

18.08.02立山18
バスの車窓からは、落差日本一の称名滝を見ることができます。

18.08.02立山19
こちらはラムサール条約にも登録されている弥陀ヶ原湿原です。写真ではわかりにくいですが、餓鬼田、あるいは池塘(ちとう)と言われる池があります。湿原の泥炭層に見られるものです。

弥陀ヶ原の独特の地形には、帰りの高原バスで走っている際に気づきました。思っていたより弥陀ヶ原の両側が川によって侵食を受け渓谷になっていました。下調べの段階では、まず文献の文章を読み想像する。地図の等高線や記号からより詳しく想像を細かくする。という順序で理解を進めます。その第二段階で見落としていた点に現地で気づくことができたのはとても良かったです。

高原バスを降りて到着したのが、室堂です。実際には復路で見学したのですが、以下、室堂の様子です。

18.08.02立山20
室堂で集合写真。

18.08.02立山21
みくりが池。真夏にもかかわらずところどころ雪が残っています。

巡検ごとに思うのですがやはり、実際に自然を歩いたり見たりしてスケール感を感じることは大切だと感じました。カールとか教科書で見るのと現地で見るのじゃかなり認識が違うと思います。またライチョウを生で視たことで更に、興味がかき立てられました。

18.08.02立山22
4羽のライチョウ。夏毛は茶色で、冬毛は白です。

地獄谷に向かう途中で、天然記念物である雷鳥に出合うことができ、とても感動したと同時に、火山ガスが噴出されている近くで生活できることに大きな衝撃を受け、雷鳥の生態に興味を持ちました。

18.08.02立山23
U字谷。

18.08.02立山24
山崎カール。

室堂平ではミクリガ池の周辺の遊歩道を歩き地獄谷や遠くの雪渓を観察しました。その中で、皆の中でふと疑問に思った「カールとU字谷の違い」についてその場で議論したのは面白い経験になりました。今回は時間的な関係で北アルプスの山々に自分の足で登ることはできませんでしたが、いつかまた立山を訪れた時には挑戦してみたいと思います。

18.08.02立山25
地獄谷のようす。

僕は小学五年生の時にアルペンルートを長野側から富山まで抜けていたのでもう一度黒部ダムや室堂平を訪れることになりました。特に印象に残ったのは室堂平の地獄谷展望台からの景色です。前回同様地獄谷への立ち入りは出来ませんでしたが、見るからに前回より噴出するガスの量が多いことや硫黄のにおいがきつくなっており、日本が活発な火山活動を続ける国であることを実感できました。

18.08.02立山26
立山連峰の主峰「雄山」の直下から湧出する「立山玉殿の湧水」。歩いた後に冷たい水がとてもおいしいです。

さまざまな川が流れていることや湧き水がわいていることも興味深かったので、そこも調べてみたいと考えています。

室堂の次の大観峰まではトロリーバスに乗ります。トロリーバスはバスとは言うものの、パンタグラフがついており、電気で走っています。見た目は完全にバスなのですが、法的には電車に区分されます。日本でこのアルペンルートにしかありません。
18.08.02立山27
18.08.02立山28

個人的に非常に楽しみにしていた立山トンネルトロリーバスでは、どことなく東京メトロの車両に似たモーター音を聞くことができて興奮しました。また、狭いトンネルを高速で走行させる運転手さんの技を見て感動しました。

黒部ダムの資料館では、破砕帯を80メートル掘ることに7か月かかったことを知り、黒部ダムの建設の難しさを実感した。

資料館を見て黒部ダムの建設には171人の犠牲があることを知り、今の生活の電力この犠牲の元に成り立っているのだと感じとてもありがたく思いました。

18.08.02立山29
大観峰からの景色を楽しむ。

18.08.02立山30
大観峰の次が黒部平で、ここはロープウェーを使います。「ワンスパン方式」と言われるロープウェーには一本の支柱もなく、重りによってたるまないようにしています。

18.08.02立山31
黒部平側から見た大観峰です。

高く連なる山々や未だ残る雪を見てとても感動しました。

18.08.02立山32
大観峰の次の黒部平まで、もう一度ケーブルカーに乗ります。

18.08.02立山33
ようやくたどり着いたのが黒部湖・黒部ダムです。

18.08.02立山34
大迫力の黒部ダム。

18.08.02立山35
黒部ダムの放水できれいな虹ができています。主虹と副虹では、色の順番が反対になっているのが分かります。

18.08.02立山36
黒部ダムを背景に集合写真。

18.08.02立山37
展望台から見たようす。

長い時間をかけてやっと到達した黒部ダムでは、放水量に圧倒されました。すごい迫力だということは知っていましたが、まさかこんなにも圧倒されるとは到底思っていませんでした。今回の巡検に参加して良かったと一番思えた瞬間でした。通路の柵に近づくとものすごい風が吹いてきた上に水しぶきも飛んできたのが印象的です。特別展示で黒部第四ダム建設の苦労も知ることができて非常に満足しています。

3日目は、もともとの予定を変更し、もう一度ヒスイ採集にチャレンジしました。とってきたヒスイを、宿舎で部員同士見せあっているうちに、ヒスイと思われるものがほとんどないことが分かってきて、もう一度採集したいという思いが強まってきたためです。今度は青海海岸というところに行くことにしました。

18.08.02立山38
18.08.02立山39
青海海岸での採集の様子。一日目に比べると、いろんな礫の種類を見分けることができるようになってきているようですが、それでもやはりヒスイを見つけることは容易ではありません。

自分はこれまで岩石探しというものをまともにやったことが少なく、知識も十分でないため探す意欲もそれほど高いものではありませんでした。ですが今回本当に様々な種類の岩石を探して、展示しているものを見ていく中で、岩石に対する知的好奇心が刺激されただけでなく、少しだけですが知識も得ることができました。

18.08.02立山40
30分の採集後、予定していたフォッサマグナミュージアムに向かいました。

18.08.02立山41
フォッサマグナミュージアムでは、採集した礫の鑑定をしてもらうことができ、私たちもお願いしました。

18.08.02立山42
緊張の面持ちで鑑定結果を待つ部員。

翡翠は白くて、重くて、つやつやしたり、光沢がある、という性質があると聞いて頑張って探しました。結構苦戦しました。その結果ロディン岩という間違えやすい石を採集する事になってしました。でも惜しかったので嬉しいです。

特に印象に残ったのが翡翠採取で、多くのことを学びました。日本の国石に選定された翡翠ですが、付近の海岸で拾うのはかなり難しいと実感しました。25人が一斉に合計1時間半ほど探しても3個見つかるのがやっとでした。石英や流紋岩などの翡翠と間違われやすい石の種類が多く翡翠を見つけるのが至難の業であることを実感しました。しかし、ここでの採取体験で学んだのは翡翠に関することだけではなく、石を拾って先輩や石に詳しい友達に鑑定してもらうことで、自分でも段々石の種類を見定めることが出来るようになりました。

翡翠(と決めつけていた)を職員の方に鑑定をしていただきました。もちろん翡翠ではありませんでしたが、学芸員の皆さんが、見たとたんに石の種類を特定していて、さすがプロだなぁと思いました。

18.08.02立山43
館内の充実した展示を見るにはずいぶん時間が足りなかったですが、たくさんのヒスイを見たり、フォッサマグナの成り立ちを知ることができました。

その後、リニューアルオープンしたばかりのフォッサマグナパークに行きました。

18.08.02立山44
左は灰色、右は茶色の岩が見えていますが、これが糸魚川静岡構造線です。左が古い岩石、右が新しい岩石となっており、地学的にはここで東日本と西日本が分かれます。

18.08.02立山45
構造線の前で集合写真。

フォッサマグナパークでは東西日本の地質学的境界である糸魚川‐静岡構造線を見ることができました。新しい岩石と古い岩石とでは固さに大きな違いがありました。

最後に行ったフォッサマグナパークの、柱状節理と糸魚川-静岡構造線の境は、見てとても感動しました。地球の長い時間が身近に感じられて、良かったです。

18.08.02立山46
少しわかりにくいですが、直径12mもある枕状溶岩に放射状の節理がみられます。

18.08.02立山47
別の場所で、わかりやすい枕状溶岩をみることができます。

枕状溶岩を観察しましたがおそらく野外で見たのは初めてで、見たいと思っていたものだったので見られてよかったです。

予定していたヒスイ峡にはいくことができませんでした。また、今回はヒスイを取ることができなかったり、時間が少なく見足りない部分も多かったと思いますが、ぜひほかの機会に訪れてほしいと思います。暑い中でしたが、無事に行程を終了することができました。宿の方々やバスの運転手さんをはじめ、巡検を通じて様々な場所でお世話になった方々に、この場をお借りしてお礼申し上げます。ありがとうございました。