• 理科 地学 春の地学野外巡検旅行(栃木県・葛生方面)

理科 地学 春の地学野外巡検旅行(栃木県・葛生方面)

2015.04.04

  • 地学部
  • 理科

4月1日(水)から3(金)にかけて,理科・地学では,地学部を中心とした栃木県で春の地学巡検旅行(2泊3日)を行いました.今回のテーマは,地学部の研究対象として取り組んだ部員もいる「葛生の石灰岩」をメインとしたフィールドワークでした.
1日目は,有名な石材でもある大谷石の露頭観察と資料館見学,そして栃木県内の鉱山を巡り,鉱物採集を行いました.2,3日目は,葛生化石館にお世話になり,これまでも地学部員がフィールドとしてきた鉱山に入れていただき,地質調査の基本と化石採集を行いました.今回は専門的な要素が多く,理解の難しいことや根気のいる作業も多かったですが,よりきちんとした経験となったかと思います.また,研究対象となる岩石サンプルも得られ,今後に期待しています.
20150401tochigijyunnkenn1.JPG


1日目(4/1)
1日目は不安定な天気でしたが,大雨になることはなく小雨の中,予定通り宇都宮駅を出発し,葛生に向けて県内を回りました.最初は,石材としても有名な大谷石の産地です.切り立った大谷石の露頭があちこちに見られ,資料館ではその大谷石を切り出した大きな地下空間を見学しました.どのようにして石材を切り出し,そしてどのように利用してきたのか,人と石の歴史を垣間見ることができました.その後,葛生方面に向けて,栃木県内の鉱山跡を2カ所ほど巡り,鉱物採集をしました.
20150401tochigijyunnkenn2.jpg
大谷石資料館前で昼食.背景の露頭が凝灰岩で,大谷石と呼ばれています.このあたりは,大きな露頭がたくさんあり,切通しや観音などもあり観察するのにはもってこいでした.
20150401tochigijyunnkenn3.JPG
大谷石資料館では,石材を切り出した巨大な地下空間に入ることができます.古代遺跡に入ったかのような迫力でした.広大な空間を人間が切り出した訳です.(拡大可能)
20150401tochigijyunnkenn4.JPG
資料館にあった帝国ホテルロビーの壁面彫刻のレプリカ.立派な建物をはじめ,家の石垣にもよく使われているのが大谷石です.関東では注意して歩けば,身近に見ることができます.(拡大可能)
20150401tochigijyunnkenn5.JPG
その後,栃木県内の2か所の鉱山跡を訪れ,輝水鉛鉱や閃亜鉛鉱などの鉱物を採集をしました.
20150401tochigijyunnkenn6.JPG
夜は,あきやま学寮という施設に宿泊し,夕食はBBQをしました.以前は火おこし枯らしましたが,今回は,チャッカマンからスタートです.用意された食事よりも,自分たちで協力して作ることで,部活動としても親睦を深める大切な時間になります.
2日目(4/2)
2日目は,今回非常にお世話になった葛生化石館を見学し,巡検旅行のメインである「葛生地域の石灰岩」について,各地の石灰岩,葛生の石灰岩に産出する化石,石灰岩の利用など,基本となる知識を学習しました.午前中は,化石館の見学後,奥村よほ子学芸員にレクチャーしてもらいながら,地質調査の基本であるルートマップの作成やクリノメーターの使用方法を教わりました.午後は,住友大阪セメントさんに協力をいただき,唐沢鉱山に入り野外調査をしました.ここは,以前,地学部員が調査をした場所であり,地質調査の基本を実習するとともに,これまでの研究を発展させる意味もありました.初めて本格的に調査する者もいる中で,苦労しながらも徐々に上達していく様子がうかがえました.なかなか現地で時間をかけて学ぶことは学校内では難しく,地質学のみならず多くのことを得られたのではないかと思います.
20150401tochigijyunnkenn7.JPG
葛生化石館で奥村よほ子学芸員から説明を受ける生徒.ここでは腕足動物という生物について,体の構造や生態を議論していました.
20150401tochigijyunnkenn8.JPG
化石館にある石灰岩の利用に関する展示.自分たちの生活や産業と地質学がどのように関係しているかを知るために,とても有効な展示だといえます.(拡大可能)
20150401tochigijyunnkenn9.JPG
化石館の前で花壇を利用して,ルートマップの実習.方位磁針と方眼紙とペンで,歩測を使って,おおよその位置関係を紙に落としていく作業です.山の中の地質調査では基本になります.(拡大可能)
20150401tochigijyunnkenn10.JPG
午後に訪れた住友大阪セメントの唐沢鉱山.巨大な鉱山に入り,全貌を眺める機会はあまりないので,貴重な体験だったのではないでしょうか.工場見学のような側面もあり,日常生活と少しリンクしたでしょうか.
20150401tochigijyunnkenn11.JPG
夕食後は,葛生の扇屋旅館にて,採集した鉱物の披露やルートマップの整理,明日への反省や改善点が熱心に話し合われました.
3日目(4/3)
最終日は,2日目と同様に,吉澤石灰さんの大叶鉱山に入れていただき,地質調査と化石採集を行いました.葛生の石灰岩は,古生代に形成されてもので,当時生きていたウミユリ,フズリナ,腕足動物などの化石が産出します.何億年も前の生物の遺骸からできている石灰岩が持つ,壮大なバックグラウンドがよく体感できたのではないでしょうか.充実した巡検旅行にご協力いただいた方々に感謝いたします.
20150401tochigijyunnkenn12.JPG
露頭を前にして,岩相や走向傾斜,化石の種類など,丁寧に記載し,サンプリングしていきました.(拡大可能)
20150401tochigijyunnkenn13.JPG
この鉱山の石灰岩に含まれるフズリナ.たくさん見られる1cm程度で米粒のようなものがそうです.(拡大可能)
20150401tochigijyunnkenn14.JPG
昼食は,葛生地域を一望できる嘉多山公園で食べ,満開の桜と景色を楽しむことができました.(拡大可能)