理科 地学 春の地学野外巡検旅行(館山・富浦方面)
2013.04.16
4月3日(水)から5(金)にかけて,理科・地学では,千葉県の南房総市富浦と館山で春の地学巡検旅行(2泊3日)を行いました。今回のテーマは,東日本大震災から2年が過ぎ,地震・津波をはじめとした防災を考えるフィールドワークを行うことと,館山・富浦地域の地質巡検です。
1日目は,天候が悪く雨宿りもしましたが,目的のひとつであった館山の沼サンゴを見ることができました。2,3日目は,宿舎とした大房岬少年自然の家を拠点にして,地震や津波の際にどのような避難経路を取って,どのように逃げればよいかを考えるため,狭い地域をくまなく歩いて回りました。自分の足で歩いて,直接,目で視て,体で感じ,防災という答え出にくい問いに対し,少し向き合うことができた3日間でした。お疲れさまでした。巡検レポート,しっかり仕上げましょう。
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1日目(3日)
1日目は雨風が強く生憎の天気で,予定通り東京を出たものの,館山駅で停滞することになりました。自然の中で活動する時は自然に従います。暇かもしれませんが,そういう時間をどう過ごすかも自然と付き合う大切な要素です。午前は活動できませんでしたが,お昼を過ぎ少し天候がましになってきたため,ひとまず目的地近くの館山市立博物館に移動し見学しました。でも,見学しているうちに,雨が弱くなり空も少し明るくなってきたので,目的地である館山市沼地区にある沼サンゴ層を,時間を短めにして見に行きました。サンゴといっても現生のものではなく化石です。海から内陸に入った山が迫る地域に,海のサンゴの化石が出るのは縄文時代に海だったためです。自分で歩いて自分で見に行くことで,地球の変化の時空間スケールを感じることができたでしょうか。その後,大房岬少年自然の家まで移動し宿泊しました。ここでは,自分の事は自分で行います。これも地学の目的です。
館山市立博物館です。展示も歴史や民俗で地学部の専門ではないですが,急な変更で出会える機会もまた貴重な経験です。
沼地区まで歩いている様子です。写真から分かるように山の近くです。ここからサンゴが見つかるため,地球の変動を感じることができます。
館山湾はサンゴの北限群生地ですが,写真の化石から縄文海進の頃にはもっと温暖で,現在,熱帯に生息するようなサンゴが群生していたと推定されています。
宿舎は大房岬少年自然の家です。食事は配膳,後片付けなどは,もちろん自分たちで行います。
2日目(4日)
2日目は快晴で,朝の散歩では富士山を見ることができました。この日は,海の家でお世話になっている富浦地域で地震や津波に襲われた時,どのように避難すればよいのかを考えるフィールドワークです。地域を歩きまわって,地震時に危なそうな箇所を調べたり,避難経路を歩いたりすることで避難時に要する時間や危険を知るためです。ただ地図を見ていても,ある程度知ることはできますが,実際に歩いてみることで見えてくることは多くあり,生徒の感想を見ていても強く感じたようです。また,地域を歩きながら,地層の姿勢を知るクリノメーターの実習も行い,富浦に見られる褶曲構造を理解することができました。宿舎に帰ってからは,フィールドワークで得られた情報を共有し,どのように対策すればよいか議論をしました。1時間くらいは白熱した議論で,様々な可能性があがりました。まとまらない話し合いに,自然災害へ対応することの難しさとフィールドワークの重要性を感じたと思います。そのことを認識することが,まずは重要な感覚です。
海岸で元禄地震の再来想定津波高を地面との高さを測る生徒。こういう作業で感覚がついてきます。
今度は砂浜で同じように海面との高さの差を測りました。地元の方の話も聴くことができ,このあたりは砂が,年々,溜まっていって高くいるようです。測量の仕方の練習にもなります。
街中をひたすら歩きまわります。標高80mほどの大房岬も上がったり下がったりしました。中1生は体力的にも厳しかったかもしれませんが,これもフィールドワークの力です。
電柱に貼ってある津波避難時に参考になる標高の標識をチェックする生徒。房総半島では各地に見られますが,紀伊半島や高知でもよく見かけます。
那古の崖観音前での記念写真。傾斜した地層の下にお堂が見えます。
崖観音の傾斜した地層でクリノメーターを使ってみました。地質分野では重要な技術ですが理解できましたか?
昼食後と夕食後に,それぞれフィールドワークで気づいた点を付箋で地図に貼りつけて行きます。
3日目(5日)
最終日は,宿舎周辺を散策しました。海岸まで降り,地層を観察したり,クリノメーターを再度使ってみたりしました。駅まで徒歩で移動しながら,チェックしきれなかった場所を見学しました。この日も快晴できれいな海を見ることができ,充実した野外活動になりました。
退所時のトイレ掃除。自分たちで掃除すれば,きれいに使おうと思いますね。
海岸に降りできれいな東京湾をバックに記念写真。
クリノメーターで地層の走向・傾斜を測る実習。昨日の復習です。
教科書的な級化構造が見れました。習ったばっかりの中1には良いタイミングで理解が深まったでしょう。
海岸付近のポットホール。こちらも教科書的ですし,地学部の取り組んでいるテーマでもあり,色々と収穫がある巡検旅行でした。