第2回海城&YSFH数学交流会

2012.12.17

  • 数学科

去る11月10日、横浜市鶴見区のYSFH(横浜サイエンスフロンティア高校)にて記念すべき第1回交流会を行った我々は、12月15日の午後、YSFHの皆さんに本校へお来し頂き、参加生徒15名を以て、第2回の数学交流会を行いました。以下はそのプログラムです:
1.階乗進法とその拡張(山口哲君、海城)2.母集団が無限の確率をグラフを用いて導く(巴統哉さん、YSFH)3.ウラム螺旋とペル方程式〜その後の進展〜(増田卓斗さん、YSFH)4.ガロア理論概説その1〜群論とはなにか?〜(恩田直登君、海城)5.フリートーキング。
まず、19世紀末に源流があるという階乗進法に対し、それの拡張(写真1)を試みる山口君(写真2)。聴衆にとっては新しい概念だけに、丁寧に説明がなされます(写真3)。応用例については今後の課題です、と語る彼に、「それは暗号にこそ応用すべきではないですか。是非試みてみたいです」との発案が本校の井上立之君からなされ、なるほど言われてみれば、と聴衆一同が興奮。ことに、発表者の山口君が一番興奮し、早速、井上君とのジョイントワークを討議していました。こういったやりとりは、交流会ならではでありましょう。彼らの即断即決も心地よく、なにより目を輝かせて語らいあう若人の姿を見ることができるのは世話人として無上の喜びです。
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<写真1>
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<写真2>
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<写真3>


巴さん(写真4)の研究内容は、全くのオリジナルであり、古典数学の香り漂う重厚なもの。面積で確率を算出する点で、以前、本欄で御紹介した岐阜県立岐山高校の柳原合さんの研究に一脈通じるところがあり、是非、柳原さんにも聞いて頂きたい内容に思われます。 
続いて、この研究会の「祖」である増田さんは前回の発表内容を拡充され、連分数展開との関連を話されました。数学ソフト「mathematica」を用いた独自のプログラムによる研究内容の視覚化とともに、聴衆一同、その進展に驚愕しました。増田さんは、来春行われる東京海洋大学での数論の研究集会での講演も予定(本校からも恩田君が講演予定)されており、益々の成果が期待されます。
最後は、今回からの試みである本校生徒によるリレー講義。まずは何回かに渡ってガロア理論を概観することを目標に、「群論入門」を扱いました。群の定義は抽象的ですが、豊富な具体例を扱ってこその分野と言えましょう。果たして、恩田君は平易な例を用いての導入から始まり、適宜、理解の助けとするために、「手を動かして」納得できる適切な演習問題を聴衆と共に解き、十分に目的を達しました。次回は、本校の増田康隆君がバトンを受ける予定です。
フリートーキングでは前回同様、時間が足りなくなり、お互いに連絡先を交換し、4時間に及ぶ交流会が終了しました。
閉会にあたり、YSFHの高口先生、中山先生からは、この交流会が、いずれ他校も参加され、実りある大きなものになる予感がする、とのお話を賜り、一同(写真5)快哉を叫びました。
第3回となる次回は、1月または2月となる予定です。興味ある皆さんのご参加をお待ちしております。
YSFHの皆様、悪天候の中をお来し頂き、大変に有難うございました。参加者の皆様、また来年もお会いいたしましょう。よいお年をお迎えください。
 (今回から参加の皆さんの感想)
*井上鴻志郎さん(YSFH1年)
皆さん凄いですね。群論は初めて聞きましたが、とても分かり易かったです。続きを聞きたいです。数学の新しい概念を知り、今まで以上に数学に興味を持ちました。
*千葉瑠実佳さん(同1年)
これまでに自分では試みたことのない手法で繰り広げられる数学を目の当たりにし、ものの見方が広がりました。
*高瀬勇気さん(同1年)
(山口君や恩田君と)同じ高1ですが、皆さん素晴らしいです。そして驚きです。よい刺激をもらった思いで一杯です。私は素粒子物理に興味があり、そこでは群論が必須とのことです。これまで、群論にチャレンジしたこともありますが、抽象的でよくわからないところがありました。が、今日の恩田さんの講義は分かりやすく、なるほど、と納得できました(とのコメントを聞いた恩田君が、「そう言ってもらい光栄です」と返礼。その後、二人でしばし、研究談義に花を咲かせていました)。
*橋本耀さん(同高2年)
今日の話は難しく感じるものが少なくなかったのですが、私は数理に出現する規則性に興味をもっており、その点で、山口さんの発想がとても面白かったです。
*斎藤直宏君(海城高1年)
どれも興味深く勉強しました。特に、巴さんの話された「面積の比較により確率を求める」方法に興味を持ちました。
*狩野樹生君(同高1年)
斎藤君に同感です。僕は確率にそれほど親しみを感じていなかったのですが、意識が変わりました。参加して本当に良かったです。今度はYSFHさんへも寄せて頂きたいです。
(数学科教員)
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<写真4>
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<写真5>