第3回数学科リレー講座「複素数の世界」3日目

2012.08.23

  • 数学科

三日目の今日は前半戦のハイライトである「複素数の掛け算の図形的な意味」(いわゆる、ド・モワブルの定理)の紹介がテーマ。担当は小林先生です。まずは、初日に用いられた題材を今日のテーマの伏線とされました(写真1)。巧みなストーリー構成を感じます。前の走者との好連携を思わせ、こういった点がまさに「リレー」講座のよさでありましょう。
演習問題は、この二日間の内容の理解に重点をおかれ、中学生に不安を感じさせない配慮がみてとれます。中1生もそれに応えて、cos135°やsin135°の値を難なく答え、この二日間の内容の理解が十分であることが伺えます(写真2)。そして、極形式の紹介に話は入りました。いよいよ、本題というわけです。
360°を越える角のcosやsinの値についても違和感はないようで、中学生諸君の柔かな頭に舌を巻くほかはありません。まさに「鉄は熱いうちにうて」を実感します。
ところで、ややもすると、「おはなし」に終始するのでは?と思われがちなリレー講座ですが、授業内の演習にも十分時間が用意されています。とりわけ、今日の小林先生はその点を配慮され、だからこそ、今日初めて聞くテーマについて問われても躊躇することなく答えられる(写真3)のも納得というものです。
十分な演習と具体例の考察を経て、いよいよ、数学史上、有数の大定理であるド・モワブルの定理が登場。
ところで、小林先生のテキストによれば、このド・モワブル卿。フランスの数学者で1667年に生まれ、1754年に没したそうです(写真4)。また同先生によれば、ド・モワブル卿自身は三角関数に興味があり、今日いわゆる「ド・モワブルの定理」と称される表示に整理したのはC.F.ガウス(ドイツ・1777-1855)だそうで、編集子には大変に勉強になりました。
さすがに、今日初めて聞いたこの定理について、全員が感嘆の声をもらしたわけではありませんが、それでも中1の生徒を含め、何人かは感心しきりでした(写真5)。彼らはこの定理に「なにか」を見たのかもしれません。
とにもかくにも、極めて順調に前半戦が終了しました。
後半戦は、複素関数の具体例の紹介(4日目)、リーマン面出現(5日目)、代数学の基本定理(最終日)と続きます。(数学科)
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(写真1)
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(写真2)
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(写真3)
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(写真4)
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(写真5)


 【参加者の声】
中1 佐藤隼君
中1の僕にとってはすごく難しいのですが、それでもなんとかついていけているのは、今日の小林先生のようにとても丁寧に説明してくださるからです。
今日のテーマであるド・モアブルの定理ですが、最初はその図形的な意味が分からなかったのですが、高1の先輩が回答されたのを聞いていて、「あっ!そういうことなのか!!」と悟ることができました。明日からも楽しみです。
高1 高橋一誠君
今まで、虚数の意味が皆目分からなかったのですが、今日の「3乗して1になる数はなにか?」という問によって「なるほど!」と視界が開けた思いです。(虚数というネーミングがよくないと思うけれど、という編集子の問いかけに対して)「はい。でも、今日は虚数の“虚なるイメージ”が払拭できた、と言ってよいと思います。勉強になりました」。
 【授業をしてみて】
昨日はじめて三角関数を学んだ生徒にとって極形式は(アイディアはともかく、表現方法が)受け入れ難いかもしれないと考え、後のド・モアブルの定理も含め全般的に数式による表現をあまり前面に出し過ぎないようにしました。実際に複素数平面に図示しながら、掛け算によって点がぐるぐると回ることが実感してもらえるような展開を心がけました。その甲斐あってか、演習では中学生も良く出来ていたようで、担当者としては嬉しい限りです。今後、三角関数を一通り学習し終えた後にまた振り返ってもらえれば、より一層理解が深まると思います。
 最初の二日間に行った複素数、三角関数の導入から、後半に予定されている「オイラーの公式」や「代数学の基本定理」などの話題への橋渡しを無事終えることができ、ほっとしています。私自身、非常に勉強になりました。ありがとうございました。
( 小林 慶祐 )