昭和62年卒

近藤圭一郎

千葉大学大学院 工学研究科
人工システム科学専攻 電気電子系コース 教授

目標を達成するにはどうすべきか。海城が教えてくれました。

海城での学びが、教育者、研究者としての土台をつくった

鉄道に関わる仕事がしたい。鉄道ファンだった僕の小さい頃からの夢です。また、いろいろな縁があって、早稲田大学にいくことがもう一つの夢でした。
高校受験にあたり、いろいろと学校を調べてみると、海城には鉄道研究部がある。勉強しに行くための学校で、公然と趣味活動ができる(笑)。なんて魅力的なんだろうと思いました。さらに、憧れの早稲田大学に近いということから、海城高校を志望しました。

海城は自由な校風で、進学校のわりには、勉強しろと言われませんでした。周りも自分なりの何かを持っている人が多かったように思います。僕は高2くらいまでは、鉄道研究部の活動に励み、部長も務めました。部室で鉄道について熱く語った後、当時の人気アイドルグループ『おニャン子クラブ』が出演するテレビ番組『夕やけニャンニャン』に熱中する毎日でした。
鉄道研究部では、会報を作ったり、日帰り旅行に行ったり。夏合宿では、日本一標高が高いことで有名な山陰本線の余部橋梁の写真を撮りに行きました。近くの山の上から、撮影していたのですが、途中で夕立に出くわしまして。向こうの山が煙って、雨が降っている風景が、とても印象的でした。現在、勤務している千葉大学の研究室は8階にあり、東京湾が見渡せます。同じように東京湾に雨が降っているのが見える度に、高校時代を思い出しますね。

先生も個性的な方がたくさんいらっしゃいました。授業中や放課後に聞く先生の話からは、人生観なり、考え方なりを窺い知ることができ、とても考えさせられました。
中でも、特に影響を受けたのが数学の飛岡先生。教科書を勉強するのではなくて、教科書で勉強する。要するに、教科書に書いてあることは手段でしかなくて、目的は数学的な考え方を習得することだと常々おっしゃっていました。答案の書き方にも特色があり、例えば証明問題の答えは、単に式を並べていっただけでは点数をもらえませんでした。「どうしてそうなるのかという筋道をきちんと説明しなさい」と。人間は言葉にすることによって思考を整理しますよね。そうやって叩き込まれた論理の構築・表現法は、今、自分が工学系の教育者、研究者として学生たちと議論するときに役立っているように思います。

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一緒にがんばる仲間の存在

子どもの頃によく読んでいた図鑑があります。『鉄道』と『電気』。小さい頃から電車が好きだったのですが、だんだんと「なぜ電車は動くんだろう?」「どういう仕組みになっているんだろう?」という疑問を抱くようになりました。それを解明したくて、中学生のときに、理工学部、早稲田の理工学部を志すことを決めました。

高1の頃からそれなりに勉強はしていたのですが、成績はクラス40人中30番台。高2に進級する際の文理選択では、当時は、数学や物理を落として留年する生徒もいたので、先生から安易に理系を選ばないように言われました。でも、どうしてもと理系に。そこで、心機一転、もっとがんばろうと思いました。友達からも外部の模試を受けに行こうと誘われたり、一緒に勉強するようになったりして、高3になると成績はクラスで2、3番に。この時に切磋琢磨した仲間とは、今でも頻繁に会っています。文系トップで東大に行った同期は、今でもお互いの悩みを語っています。また、一人は医者になったので、毎年、人間ドックがわりに診てもらい“厳しい健康指導”をしてもらっているんですよ(笑)。

受験勉強はつらくて苦しいものというイメージがありますが、僕の場合はそうでもありませんでした。考え方として、基本的に何でも楽しむように心がけていたんです。勉強も電車の本を読むように楽しんでやってみようと。受験勉強も自分の夢を実現するためのもの。今、がんばって、大学に入学したあかつきには、自分が知りたいと思うことを存分に知ることができるようになるんだという思いで取り組んでいました。
志望大学に合格するという目標を達成したことは、とても大きな自信になりました。人生において、目標を達成するためにはどうしたらいいか。そこに向かって、やるべきことを考えて、一つずつ積み上げていけば目標は達成できる。これは、海城で得た大きな財産です。

先輩を知る2016.9①

夢は自分の能力を引き出してくれる原動力になる

大学卒業後は、公益財団法人鉄道総合技術研究所を経て、現在は千葉大学の教授として、電気鉄道や電気自動車の省エネルギーの技術の研究などに取り組んでいます。企業と共同研究したりもするのですが、そういった場で、卒業した教え子が自分と同じ分野で活躍している姿を見ると教員冥利につきますね。また、研究者としては、自分の研究が社会の役に立っているということは喜ばしいかぎりです。ただ、もっと純粋な気持ちで言うと、自分が小さい頃に抱いていた「あの電車は、どうしてこうなっているんだろう」とか「どうしてこういう風に動いているんだろう」という疑問がすべて研究することでわかるようになった。僕は、本当に幸せだと思います。

僕は「鉄道が好き」という気持ちに引っ張られてここまできました。海城生のみなさんにも、早く明確な夢をみつけてほしいと思います。それが、自分の能力を最大限に引き出してくれる原動力になりますから。海城では、自分ががんばろうと思えば、いろんな道が認められる。そんな度量の広さと多様性がある学校だと思います。

また、海城の伝統を誇りに思ってほしいですね。ここには、創立当初から日本を支えるエリートを育成するという源流が流れている。僕の職業である大学教員は個人の資質や能力が大きく問われます。その中で、僕の土台となっているのは、海城で学んだということ。その誇りが自分を鼓舞してくれていると感じています。

 

近藤 圭一郎

千葉大学大学院 工学研究科
人工システム科学専攻 電気電子系コース 教授